白い糸

創作物。詩、SS、nanaで作った声劇台本など。「禄田さつ」以外の場合もあります。

キセ と ハルカーわたなべちひろ

「スドウハルカの私を殺したら僕が生まれるかな」

ハルカはくしゃりといら立ちをぶつけるように髪を掴んだ。無造作に伸びた髪がハルカ自身の抵抗を思わせていた。

「生まれっこないんじゃないの、スドウハルカは一人しかいないでしょ。良くも悪くも」

「でも、言ってたよ」

若干、涙が混じっている。

「人間誰しも女や男の部分があって、そのバランスによって性が決まるんだって。私の部分を押し殺せばいいんじゃないの、違うの」

「…その私の部分を殺してもいいと思えるような素敵な女性と恋愛したら変わるんじゃない」

つらつらと出てしまった言葉に後悔する。ハルカの目はぐらぐらと涙ぐんでいた。

「バカ、そんなのできてたら今頃してるから、こんなこと信用してなきゃ言わないから、なんて無神経なの、キセって」

ついに泣き出してしまったハルカを見ていても俺はなんとなく冷静だった。

「ごめん、俺当事者じゃないからわからないし、自分の気持ちもわからない、本当ごめん」

「…私も悪かったよね。ごめん」

泣いたままのハルカの白くて細い腕を掴み、引き寄せ頭をぽんぽんと叩いた。今の俺にはこんな選択しかできない、責任すらまともに持つことができないのだ。