白い糸

創作物。詩、SS、nanaで作った声劇台本など。「禄田さつ」以外の場合もあります。

立夏(未雨)

立夏

春と夏の境目に落ちた。
誰も知らなくて、誰も助けてくれない。
痛みをかみしめながら、私は立ち上がった。

歩いた先には壮大なゴミ捨て場が点在している。
春や夏のゴミを捨ててるんだろう。
人々の行動に珍しく私は環境問題について考える。

生ゴミのようなにおいもしないので近づいてみた。

割れた鏡、長袖の洋服、中学校の制服。

いとも簡単に「春」を捨ててしまうのか。
ぴゅうぴゅうとふく風が少しだけ冷たい。


春と夏の境目に落ちたようだ。
誰も見ることをやめた、誰もこの空間にに見向きもしない。
だんだんと冷えていく心とともに、歩みをすすめた。

長袖の少女が見える。
手を振ると彼女も私に気がつき、駈け寄ってきた。
なんだかなつかしいような表情をしていた。
知り合いかもしれない。

彼女とともにゴミ捨て場の前を通った。

割れた鏡、長袖の服、中学校の制服。

「いとも簡単に成長していってしまうの。
みんな私をおいていって」
彼女は下唇をかんだ。

少し幼げな彼女の名前をまだ思い出せない。

 

「みんな高校行ったら友達もできて楽しいよね」

「うん、楽しいよ。私も二年目だし」

「でも中卒でずっこけた人間はそのままなんだ」

 

彼女は無言で長袖をめくり、私に腕を見せた。

いつつけたのかわからない線状痕。

言葉の出ない私に彼女は、小さくほほえんだ。

 

「平等に、夏は来るから、いいんだ。」

少しだけあきらめているようにも見えた。

「…じゃあ、今は葉桜と八重桜楽しもうよ」

彼女は目を見開いたあと、にっこりと笑った。

 

「楽しむよ」

 

春が過ぎ、夏へ近づこうとしていた。

誰もが知っている、立夏の日。

暑さをかみしめながら、私は制服を着、歩く。

 

春に咲いていた桜が葉桜になって

ずんずんとおいしげっていた。